23 Feb 2017

あじあ じん


 

友達が明らかな人種差別の被害に遭いました。

彼はマカオから来た中国人で、
イギリス人とブラジル人の夫婦の家庭でホームステイをしていました。

イギリス人であるホストファザーは良い人だったそうですが、
ブラジル人のホストマザーは何人か受け入れている留学生のうち
唯一のアジア人だった彼にあからさまな差別的態度を示していたと聞きました。

たとえば、
夕食後、ほかの学生の食器は片付けて洗うのに、彼のだけは放置したり、
ほかの学生は良いけれど、彼だけは夜中にトイレに行くのを禁じたり、
水たまりで濡れてしまった服を洗濯しようとしたら、「汚いからうちで洗濯しないで」と拒否されたり・・・

一緒の家でホームステイをしていたほかの学生からも、
ホストマザーの彼に対する態度はひどかったと聞きました。


これは「中国人の身に起きた話」、ではないんです。


正直、アジア圏以外の人にとって、
中国人も韓国人もタイ人もベトナム人も台湾人も日本人も、みんな同じようなものなんです。

「アジア人」でひとまとまり。どこの国かはたいして大きな問題ではない。


私たちが白人をみて、
アメリカ人かイギリス人かオーストラリア人かカナダ人か、見分けがつかないのと一緒。
黒人みて、アフリカの人と思い込むのと一緒。


みんながみんなそういう発想だということではないですよ。


私が言いたいのは
彼が差別を受けたのは「アジア人だから」ということ。


アジア人の彼は、たまたま中国人だった。
でももし彼が日本人だったとしても、同じことが起きていたと考えられるのです。


日本にいると、
日本人か中国人か韓国人か、他のアジア人かという国籍の違いがとても大きくて、

どこかほかの国に旅行で行って、
現地の人とかに自分が日本人ではないほかのアジアの国の人と間違われたりすると
「日本人なんですけど!」ってなんとなくショックを受けた経験をしたことはありませんか?

私はなんとなく自分のこのリアクションに後ろめたさを感じながらも、
やっぱり日本人だと思われなかったことに切なさを感じたことがあります。
私のほかの友達も何人か同じような経験をしていたのを聞いたことがあります。


ただ、イギリスで生活して気づいたことは、
ほかの大陸からきている人がそう思うように、
自分たち自身も「アジア人」という括りに一体感を覚えるということ。

差別の被害にあった彼の話を聞いた、
中国本土からきた中国人も、香港からきた中国人も、
台湾人も、韓国人も、タイ人も、日本人も、
みんなして憤慨しました。


なんにも悪いことしていないのに、
人種がアジア人というだけで、
国籍が中国人(または、韓国人、日本人など)というだけで、
差別されるなんて
馬鹿馬鹿しいと思いませんか?!


また、英語という言語はもともとラテン語から派生しているのもあって、
ヨーロッパ人にとっては比較的英語はなじみやすいけれども、
アジア人にとっては完全に違う言語になるので、なかなか苦労する点も多い。

それをイギリス人から
「アジア人は○○ができないから」と言われることもあります。

現地の言葉を理解し、
極力ナチュラルに話せることが一番理想的な状態ではあるけれども、
言葉がうまくできないだけで、

街で不審者を見るような目で見られたり
(あからさまに外国人の見た目というのもあるけれども)、
頭が弱い的な感じの扱いを受けることもあります。



ただ、こうした悲しいこと憤慨することばかりではなくて、
いろんな国籍の人と文化的違いを話しているときに、
日本にいたら完全に別物扱いしていたであろう中国文化も韓国文化も、
「アジア文化」として、「私たちアジアの文化は~」と話すことが多い自分に気づきました。

漢字を書けば中国人や台湾人と共通意識をもって話せるし、
日本語を発音してみると韓国人と同じような発音の言葉で通じ合うことができたりします。


このような、悲しくて怒りを覚えることも、共通点で盛り上がることも、
日本だけで生活していたら気づくことができなかった「アジア人」の一体感だなあと思います。



外から見てみて、改めて日本の文化を考えることも多く、
日本人の振舞や、働き方、教育、歴史、政治のシステム、ポップカルチャーなど、
人に話すことで改めて誇りに思えることや、逆に恥ずかしく思うこともあります。


できる限りすべての日本人が、
日本という小さな島国にとどまって一生を過ごすのではなく、
(英語圏にこだわらず)海外で生活する経験ができたら、
もっと自己の文化を見直しながら
ほかのアジア圏の国々に対しても寛容な意識を持てるのになあと思いました。


みな同じ人間。

自分がされて嫌なことは、他の国の人にとっても嫌なことだし、
自分が楽しいと思うこと、幸せだなと思うことは、他の国の人とも分かち合うことができるんですよ。